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「ラストエントリー」原案

[114]文叔(ぶんしゅく)


どうもこちらでははじめまして、文叔(ぶんしゅく)と申します。
えーこれは「ペッコミ オリジナルP.E.T.S.ストーリー お花見記念・隠し芸大会」でぼくが参加させていただいた部分「ラストエントリー」の原案になります。
本来だったら「原案」ではなくぼくが使えるものを書くべきだったのですが、どうもそういうものにならなくて(汗)。
で、これはお蔵入りになるはずだったんですが「せっかく書いたんだし読んでもらいたいなあ」という想いもありまして(汗)、
こちらのスタッフさんの許可をいただいて発表させていただくことにしました。
最後の「あとがき」っぽいものもついでに(笑)。
よかったら読んでやってくださいね。



ステージ脇からたまみに一枚のメモが渡された。
「え? あ、はい、わかりました。えー、それではここで飛び入り参加を募りま〜す! お客さん、どなたかいらっしゃいませんかあ!?」
「へえ〜、そんなのプログラムには書いてなかったけどな」
「でもさあ、かくし芸の飛び入りってあるか? ああいうのって準備してないとできないもんだろ、普通?」
などと客席で会話が交わされるが、すっと一人の女性が手を上げるのを、たまみは目ざとく発見した。
「はい! そこの方! ステージへどうぞ!」
びしっとたまみに指をさされた女性は、拍手に包まれながらステージに向かう。
「あ、あの人……」
ステージ脇の階段を昇る女性を見たゆきが、小さく声をあげたが、それは誰にも聞こえなかった。


手になにやら楽器のケースを持ってステージに上がったその女性は、かなりめずらしい格好をしていた。
一言で言ってしまえば京劇風の衣裳を着ていたのだ。
さらにフードのようなものをかぶり、顔を見せないようにしている。
「え、えーっと……」
流れに任せてステージに上げてしまったが、
あまりに奇妙な「飛び入り」に、たまみはなにをどう訊いていいか困ってしまった。
しかし女性は、そんな彼女にフードからわずかに見える口元だけで微笑してみせた後、
なにも言わずにステージ中央へゆっくりと歩き出す。
「あ、あの……」
その微笑にふっと心がなごむたまみだったが、はっとして女性に声をかける。
しかし彼女はたまみには応じず、ステージ中央に「いつのまにか」置かれていた椅子に腰かけた。
「おい、あんな女(ひと)、うちの町内にいたか?」という客席のざわめきの中、女性はケースを開くと楽器を取り出した。
「なんだ、あれ?」
それは三味線のような形をしているが、ひとまわりほど小さい、まったく違う東洋風の楽器だった。
「ありゃあ、二胡(にこ)だ」
町内の楽器屋の主人の言葉に、まわりの人たちが視線を向ける。
「二胡?」
「ああ、日本じゃ胡弓(こきゅう)って言い方が一般的だけどな。中国の弦楽器だよ」
「へえ〜、そんな楽器があったんだ」
「聴いたことないけど、どんな音出すんだ?」
「そうだな、バイオリンよりなめらかな感じってとこかな。中国の楽器では代表的なものだから、『中国風』の音楽を聴いたことがあれば、まず確実に聴いたことはあるはずだけどな。まあすぐに聴けるんだから聴いてみろや」
女性の特異な格好と奇妙な行動にいささか引いていた客だったが、どうやら危ないことをしそうな人でも、
妙な出し物でもないとわかると、安心したようにステージを見やる。
「え、えーっと、それでは飛び入りさん、どうぞ!」
ややペースを乱されていたたまみだったが、それでも女性の準備が整ったのを見ると、司会の役を果たした。
その声に客席から拍手が起こり、それに応じるように女性は二胡を構えた。
膝の上にたて、二本の弦の上方に指をかけ、馬の尾の毛を張った竹製の弓を弦の下方に当てる。
拍手がやんで半瞬後、彼女は弓を動かした。


瞬間、世界から音が消えた。


風が歌う。二胡の音にあわせるように。
光がさざめく。二胡の音に輝きを加えるように。
大地が広がる。二胡の音を抱きしめるように。
目に見えないものすべてが、二胡の音にさそわれ、躍動する。
そして人はどうこたえるのだろう。二胡の音に。
人は、それを深く聴くことでこたえた。
風よりも、光よりも、大地よりも、そしてほかのなによりも。
耳だけでなく、心だけでなく、すべてで聴いた。
だから聴こえた。だから見えた。
風の歌が。光の微笑が。大地の抱擁が。
見えないはずのものを見、聴こえないはずのものを聴きながら、しかし人に恐怖はなかった。
ただすべての想いをこめて聴きつづける。二胡の音と、自然の歓喜を。


歓喜の歌に、色が加わる。
淡く白い桜色が、人々の視界を染めた。
二胡の音色にさそわれた春の子供たちが、人々の間で乱舞をはじめたのだ。
風の歌にあわせ、光の助けを受け、大地の舞台に乗りながら、桜の花びらが群舞を舞う。
その中で、人たちは聞いた。
「愛していますよ……」
声だっただろうか。そうではなかったかもしれない。
それは人には声として聞こえたが、他のものたちにはべつのものとして感知されたのだ。
人にも、動物にも、植物にも、それ以外のものたちにも、「それ」はおなじことを伝えていた。
「愛していますよ、あなたたちが夏を愛するように。愛していますよ、あなたたちが秋を愛するように。愛していますよ、あなたたちが冬を愛するように。愛していますよ、あなたたちが春を愛するように……」
「それ」は、すべてのものに語りかける。「それ」がなにか、人にはわからない。
だが次の声がだれのものか、それはすぐにわかった。
「ありがとう、ありがとう……」
感謝の声。幼い声。子供の声。
それは彼らを包んで舞い踊る、桜の花びらが発しているものだと、人たちにはすぐわかった。
彼らが「それ」にではなく、自分たちに感謝してくれているのだということも。
「ありがとう、ありがとう、愛してくれてありがとう……」
「ありがとう、ありがとう、ほんとにほんとにありがとう……」
人たちはこたえた。言葉ではこたえない。しかしこたえた。彼らの想いに。
その想いに、感謝の想いがさらにこたえる。
「ありがとう、ありがとう……」
連なる想い、連なるこたえ。
人たちは愛している。桜の花を。
桜の花たちは感謝している。人たちに。
人たちは感謝している。桜の花に。
桜の花たちは愛している。人たちを。
いつしか愛情と感謝の想いは、桜の花と人たちと、双方から発せられるようになった。
「愛していますよ、愛していますよ……」
最初の「声」が響く。彼らの想いをすべてのものに伝えるように。
その想いですべてを染めあげるように。
「それ」は、たしかに女性の声だった。
つつみこみ、あたため、うるおしてくれるその声を、知っているものは人たちの中にいなかった。
だが、人ではないものたちの中にはいた。
彼女たちは「それ」と「それ」が愛するものたちに和した。
「愛していますよ、愛していますよ……」
ゆきが奏でる。
「ありがとう、ありがとう……」
るるがこたえる。
「愛していますよ、愛していますよ……」
みかがささやく。
「ありがとう、ありがとう……」
ななが応じる。
「愛していますよ、愛していますよ……」
あゆみが詠じる。
「ありがとう、ありがとう……」
ももが返す。
「愛していますよ、愛していますよ……」
らんがほほえむ。
「ありがとう、ありがとう……」
たまみがつむぐ。
「愛していますよ、愛していますよ……」
つばさが歌う。
「ありがとう、ありがとう……」
みどりがとなえる。
「愛していますよ、愛していますよ……」
くるみがつまびく。
「ありがとう、ありがとう……」
あかねが弾じる。
ここに在る、すべてのものの想いを天使たちは歌いあげ、
彼らは彼女たちを通して、自分たちの想いを聴いた。

そして、忘我のときを終えた人たちは、自分たちが涙を流していることを知った。
自分たちの体験が夢ではないことも、彼らは知っていた。
花びらは乱舞をやめ、人たちに降り積もっている。
ステージ上に女性の姿はすでになく、
椅子の上に置かれた二胡がやさしく、満足そうに人たちを見おろしていた。
桜の花びらにうもれて。


「え、でも……」
夕暮れどき、あとかたづけ特有のさびしげなにぎわいと、
あの不思議な体験の余韻がただよう会場で、ご主人さまは戸惑っていた。
「いやでもさ、ほら、あの人の住所がさ、きみのところになってるんだよ。苗字もきみと同じだし」
町内会長は、かくし芸大会の参加者名簿を指し示しながら言った。
「だから優勝賞品はきみが変わりに受け取っておいてくれ」
あの人、二胡の奏者は、結局姿を消したままだった。
よって優勝賞品を「優勝者」に贈ることができないでいたのだが、
参加者名簿に彼女の住所氏名が載っており、
その住所のあるじが、代理として呼び出されたのだ。
飛び入りの彼女が、いつ、どうやって参加者名簿に自分の名前を書いたのか、
そんなことはあの体験の前には意味のないことだった。
「いえ、でも、ぼくはあの人のこと全然知らないんですよ」
ご主人さまは、当然困惑しながら辞退しようとした。だが町内会長も引かない。
「いいんだ、あの人がきみの家の住所を書いたということは、きみにこれを贈りたかったんだろう。なにか事情があるんだろうが、そんなことはどうでもいい。あの人への感謝の気持ちもこめて、これをきみに進呈させてくれないか」
笑いながら、町内会長は賞品をご主人さまに差し出す。
その想いはご主人さまにもよくわかるが、それだけに受け取れなかった。
「で、でも、ぼくがあの人の代理だなんて……」
「ご主人さま」
なにかとても畏れ多いことをしようとしている想いにかられ、
うろたえるご主人さまの背後から、ゆきがささやいた。
「え、なに、ゆきさん?」
「受け取っておいて大丈夫ですよ、きっと」
「え、でも……」
「大丈夫、わたくしの言葉を信じてください」
「う、うん、わかった……」
いつになく神々しいゆきの微笑に、ご主人さまはうなずいて、町内会長から賞品を受け取った。


それをはるか高みから見ていた「優勝者」は、にっこり微笑んだ。
「いつもわたしの大切な守護天使のためにがんばってくれてますからね…… ほんのすこしですが、お礼と手助けをさせてください……」
「優勝者」は微笑したまま、もう一度つぶやいた。

「愛していますよ、あなたたちを……」


                                         おわり






※より後の部分は、メガミさまが優勝した場合のために書いておきました。
もちろんメガミが優勝したとしても、使っていただく必要はまったくありません。
みなさんの編集方針を最優先にしてください。
最初にお話の概要を読ませてもらったときに、
「こりゃあ、だれが優勝しても角が立つかもな」と感じたんで、
みんなが納得する形で事を収めるにはメガミさまを出すのが一番かも、と思ったんです。

で、優勝賞品で「町内商品券10万円分」っていうのを提案したのは、
メガミにしてもあまり守護天使とご主人さまの生活に干渉しないほうがいいとわかってはいても、
それでもたまには手助けしたい、という気持ちもあるんじゃないかな、と前々から感じていたんで、
そういう機会を彼女に与えてあげたいな、というところからだったんです。
このくらいだったらいいんじゃないかな、と。

それと、申し訳ないんですがぼくは見習い守護天使たちについてほとんど知らないんで、
ちょっと出すのを控えておきました。

メール 2003年08月25日 (月) 06時48分


[120]エマ
Re:「ラストエントリー」原案


エマです。その節はどうも(^^
文叔さんのこのSSは、本編にこそ載せられませんでしたが、それはこのSSのメガミ様が作り出す独創的な世界の荘厳さがとても突出していたので、バランスを考えて採用を見送ったのですが、このSS自体は、それだけの個性とインパクトがあると思います。

とにかく、メガミ様の全ての者に対する無限の愛情に心から涙が溢れてくる、そんな素敵なSSですね。
きっと、その場に居た人たちはしばらくの間、ずっと愛に溢れていたに違いないでしょう。
できれば、それを毎日実践できるのが素晴らしいんですけどね。

ではまた、ご縁がありましたら一緒に作品を作っていきたいですね☆

メール 2003年09月08日 (月) 01時18分




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